相続とは

 人(被相続人)が死亡すると、その人に属していた財産(相続財産、遺産)は、相続人に承継されます。承継の対象となる財産には、積極財産(不動産、預金、有価証券等)だけでなく消極財産(借金その他の債務)も含みます。ただし、被相続人のみに帰属する特殊な権利義務(一身専属的権利義務)は承継されません。

法定相続人と法定相続分

 被相続人の子は第1順位、被相続人の直系尊属(親)は第2順位、被相続人の兄弟姉妹は第3順位の法定相続人です。また、被相続人の配偶者は常に相続人となります。この他、これらの法定相続人が被相続人の死亡以前に死亡したり、相続権を失ったりしたときには、その子が相続人に代わって相続人となります(代襲相続人といいます)。

 メモ
 配偶者とその他の法定相続人が一緒に相続する場合の法定相続分は、以下のとおりです。

配 偶 者直系尊属兄弟姉妹
1/21/2
2/31/3
3/41/4

相続の承認、相続放棄

 相続財産には、不動産や預金などの積極財産だけでなく、借金のような債務もありますので、相続人には相続するかどうかを決める自由が認められています。
 相続の承認には、全面的に被相続人の権利義務を承継する「単純承認」と、被相続人の債務は相続によって承継した積極財産を限度としてのみ負担するという「限定承認」の二つがあります。
 「相続放棄」とは、相続による権利義務の承継を一切拒否するものです。

 単純相続をする場合は、特別な手続は必要ありませんが、限定承認と相続放棄については、原則として、相続人が相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申立をしなければなりません。この期間を熟慮期間といい、この期間の経過により、限定承認や相続放棄をすることができなくなり、単純承認したものとみなされます。

 相続する財産も借金もないと思っていたのに、熟慮期間の3か月が過ぎた後に、突然、債権者から督促状が届いて借金があることが判明する場合もあります。このような場合でも、相続放棄ができる場合がありますので、弁護士にご相談ください。

遺産分割とは

 相続人が複数の場合、相続財産は相続人全員の共有となりますので、これを各相続人が自分のものとするためには、遺産分割の手続が必要です。ただし、借金のような金銭債務の場合、各相続人が法定相続分どおりに分割して取得するので、遺産分割の手続は要りません(借金を特定の相続人だけが相続することを決めても、債権者が承諾しない限り、効力がありません)。

 遺産分割の方法等が遺言で決められていれば、それに従います。それ以外の場合は、相続人全員の協議により遺産分割を行います。協議ができないときや、まとまらないときは、家庭裁判所において、調停の申立を行ないます。調停においても決まらないときは、審判に移行し、裁判官が遺産分割の方法等を決定します。

特別受益とは

 特別受益とは、特定の相続人が、被相続人から婚姻、養子縁組のため、もしくは生計の資本として生前贈与や遺贈を受けているときの利益をいいます。
 特別受益が認められる場合には、その受益分を相続分算定にあたって考慮して計算することになります。

寄与分とは

 寄与分とは、特定の相続人が、被相続人の財産の維持または形成に特別の寄与、貢献した場合に、寄与者に対して寄与に相当する額を加えた財産の取得を認める制度です。
 相続人間の協議で決めることができますが、協議ができないときや、まとまらないときは、家庭裁判所の調停、審判において決めることになります。

相続に関する費用

  • 相続放棄
    手数料10万円(消費税別)。ただし、複雑な内容の場合は別途協議となります。
  • 限定承認
    相続財産の内容によりますので、ご相談ください。
  • 遺産分割、特別受益、寄与分(協議、調停、審判)
    取得する相続財産の価格により算定します。ただし、分割の対象となる相続財産の範囲について争いのない部分については、価格を3分の1に減額して算定します。
    弁護士費用の中の「一般の民事事件・家事事件」をご覧ください。